2019年11月19日火曜日

逍遥 湯河原・カトマンズ #129


アイキャンプ in バグルン

10月も半ば過ぎとなるのに天気がすっきりしない。バグルンのバザールから見るダウラギリ主峰は雲に見え隠れしている。朝方は小雨がちらつく。

昨年のダディン郡の二校に続き二回目のアイキャンプである。子どもの失明防止対策を目的に、201712月にNPO法人ヒカリカナタ基金、公益財団法人ヤマト福祉財団とネパールのProfessional Support Service Nepalとの間でプロジェクトの実施合意書が調印された。私はプロジェクトの企画立案、学校を中心とした村での啓もう活動、患者の病院での治療の手配、カウンターパートとの調整を行っている。

今年のアイキャンプはダサイン祭休暇明けにバグルンで実施した。日本の組織からは竹内さん、伊達さんと望月さんがそれぞれ参加した。ネパールチームは眼科医他専門家6人である。16歳以下を対象とした。まだ学校が秋季休暇中で、生徒が集まるか心配したが、地元のロータリークラブが学校単位で広報活動をしてくれたおかげで、幼稚園児から10年生まで520人が受診した。受け付け、会場整理、視力検査などは20人のロータリークラブのボランティアが手伝ってくれた。

カトマンズ医科大学(KMC)で再検査、要治療の子どもが7人いた。キャンプの後バグルンに出向いて説明会を開くも3人は参加しなかった。現地の世話人によると「これがネパールなんだな……」と意に介さない。鉛筆の芯が下瞼に刺さって4か月もほっておいた子どもはさっそく摘出手術をした。大きな芯が出てきた。眼球に届いていなかったのが幸いである。キャンプがなければほっておかれただろうと思うとぞっとする。10歳の女児は先天性白内障であるが、眼鏡を供与して3か月様子を見ることにする。斜視の女児は自ら説明会に参加して手術を申し出た。気丈なものである。

日本ネパール女性教育協会(JNFEA)の育成した100人の「おなご先生」の話はすでに本欄で紹介した。年次のフォローアップ研修の機会を一日いただき、キャンプに参加したKMCの教授、講師諸氏に眼のケア―における教師の役割を講義してもらい、視力検査等の実技を講習してもらった。離村の学校で教鞭をとる彼女たちは本プロジェクトの貴重な情報源なのである。講習後帰村した数人から早速情報が寄せられ、ムスタン郡のノウリコットに出向いた。「おなご先生」は講習で習得した検査をさっそく実施する。近隣の学校からも集まってもらった結果18人をKMCに送ることにした。11月下旬にはルクム、サリヤン、カリコットとバルディヤの学校を訪問する予定である。

この研修には海外青年協力隊員が参加してくれた。ムスタン郡の帰りにゴルカ郡の彼らの赴任している学校を訪問したところ、校長はじめ教員が真剣に当方の説明を聞いてくれて、さっそく4人をカトマンズに検診に連れてくることになった。協力隊員の学校における貢献度、信頼度は大変高く評価されていることがわかる。ゴルカ郡訪問の前日にはポカラでコミュニティ開発隊員にポスターや視力検査表、眼科ケアーの教員マニュアル等を提供して協力をお願いした。協力隊員も「おなご先生」同様の我がプロジェクトの強力な情報網なのである。公費で派遣されている彼らを使うようで気が引けるが、彼らの本来の活動に本プロジェクトが何等か資するとすれば幸いである。

二年目も終わろうとしているプロジェクトであるが、ネパールにしては異例の速度で情報網、協力網が整備されつつある。プロジェクトの趣旨をご理解いただきありがたい限りである。村落医療の立ち遅れたこの国の人たちにわずかでも光が届けられればと微力ながらお手伝いする次第である。

20191112日)