2022年9月29日木曜日

逍遥  久々のカトマンズの空気#163

 

久々のカトマンズの空気

 

カトマンズに着いて10日が過ぎた。新型コロナ感染が増加する兆しを見せる中、ムスタン、バンケ、バルディア、シャンジャ各郡の子どもたちの眼の治療を済ませ、2020216日に慌ててカトマンズを発った。2年半の間、ネパールに渡航できない苛立たしさが募るばかりであった。高齢者である私がネパールで感染したときに周囲に迷惑をかけることを恐れた。

 

成田空港の出発ロビーはあたかもネパールにいるようであった。同時間帯の出発便がランカエアー、マレーシア航空、中国南西航空と少なかったせいか、閑散とする中でネパール航空のカウンターはダサイン大祭を母国で祝うネパール人乗客でむせ返っていた。ここからもうダサインが始まっているかのように体中から歓びが発露している。チェックインカウンターの職員に帰りたくないかと聞くと、本当は帰りたいのだと正直に答える。ジャパ郡出身の好青年である。   

 

トリブバン空港到着ロビーは混雑していない。手荷物のX線検査は相変わらず長蛇の列。預け荷物のターンテーブルが一基増設されている。どこに出てくるか案内がない。タクシー乗り場まで新しい施設の長い坂を下る。この工事に何年かかったのだろう。雨の日はどうすればいいのだろうか。モンスーンの強い雨は「春雨じゃ、濡れてまいろう」と芝居気取りにはいくまい。観光立国を謳うのならば利用者の便宜を考えるべきだが、いつになったら顧客志向のサービスが生まれるのだろうか。外国の生活を経験した人が増えたので「井の中の蛙」とはもはやいえないが、母国に戻るとどういうわけか元のヒトに戻ってしまうのが残念である。

 

翌日食事をとりに外に出る。ラジンパットの交通量に眼をむく。横断歩道を渡るのに勇気がいる。交通量は増える一方なのだろう。幹線道路の拡張後あっという間に飽和状態になった。次に打つ混雑緩和の一手を早急に講じなければならないが簡単ではなさそうである。信号機が新たに設置されている。20年ほど前に日本の援助で実施した信号機を含む交差点の改善計画は、まもなく警察官による交通整理に代わった。この指導をしたのも日本のシニアボランティアであった。

 

26日はダサイン初日のガタスタパナである。インドラチョークからアサントール、ダルバールマルグを歩いてみた。ダサイン商戦は思ったほど賑わいを見せていない。この日は家庭でお祝い行事をしていたのかもしれない。ラジンパットのスーパーマーケットは店頭の飾りつけすらない。お菓子屋さんの店先も普段より折詰が多い程度で客はそれほど見られない。何か白けた気持ちでアパートに戻った。

アサントールの野菜市場が消えている。聞けば新市長が路上販売を禁じたのだという。交通の妨げや町の美観を損なうからだというが、市民の生活に影響はないのであろうか。交通の問題であればむしろ狭い路地の交通規制をするべきではなかろうか。タメル地域しかりである。一時期規制を実施したことがあったが、相変わらずの朝令暮改である。クラクションの騒音にも辟易とする。この規制も続かない。新しい市長の意欲はわかるが、整合性のとれた政策と実効ある対策と辛抱強い実施を期待したい。

 

この日、2時間ほど歩いて帰りつけば、以前この地に住んでいた当時の鼻炎が再発したのであろう鼻のむずむず感とのどの痛みを感じた。車の排気ガスと埃による大気汚染が原因と思われる。廃棄物は想像していたほどひどくなかった。大型トラックが精力的に回収している。

 

都市の様々な問題を抱えるカトマンズであるが、放置するにつれてその解消にコストと時間がかかる。早急に整合性のとれた再開発のマスタープランを策定して実施に移すことが期待される。

 

2022927日)