2023年3月13日月曜日

逍遥 うんちく《ネパール》(下)#168

 

うんちく《ネパール》(下)

 

2000年の私は大みそかから元旦の朝まで会社に泊まり込んでコンピューターの世紀替わりの異変事故に備えていた。結局何も起こらなかったのだが、300人を超える海外勤務の社員の万が一の事故に対応するためであった。元旦の朝には心優しい役員がおせち料理を届けてくれた。その彼が昨年クリスマスの日に亡くなったのが惜しまれる。

 

2001年に2回目のネパール事務所勤務となり、妻を帯同した。長男がなくなり、娘がアメリカ留学中であった。妻とは1974年にスワヤンブー寺院のアーナンダクティで結婚式を挙げて1年間住んで以来である。

 

この頃はシンズリ道路建設がマオイスト内戦のなかでも関係者の奮闘で順調に進んでいた。本社勤務時に同プロジェクトの安全対策を現場にお願いしており、現場は誠実に実行してくれた。着任翌日に大使館担当者から呼び出しがあり安全対策を問われた。前線のキャンプをドゥリケルまで下げたらどうかと提案し、コンサルタントとコントラクターに指示が出された。往復3時間以上が余計にかかるため、両者からは大ブーイングが出たが実行してくれた。その1か月後にキャンプ前の警察官詰め所がマオイストに襲撃されてキャンプも被害を受けた。もしキャンプにとどまっていたら工事は和平が成立するまで中断したか工事自体が中止となったと思われる。関係者にはご苦労を掛けたが、この措置に間違いはなかったと思っている。

 

うんちく《ネパール》の続編をどうぞ。

 

そろそろ山の話をしましょうか。ポカラへの飛行便はぜひ右側に座ってください。カトマンズ空港を飛び立つとすぐにランタンリルンのピラミッドが目にとまります。水平飛行に入るとガネシュ山群です。そしてマナスル三山。あっという間にアンナプルナ山群が近づき、ダウラギリまで視野に入ります。180㎞、25分の飛行が終わります。ポカラはカトマンズより標高が500m低いので少し暑く感じるでしょう。飛行場から見上げるマチャプチャレとアンナプルナに大感激間違いなしと思います。案内図と見比べて山名を確認してください。ネパールの国花であるラリグラス(石楠花)もまだ見ることができると思います。カトマンズ外周のナガルコットからは東のガウリシャンカールの双耳峰まできれいに見渡せます。双眼鏡をお忘れなく。山の写真を撮るなら200㎜のレンズと三脚をお持ちください。広角も有効です。一日の行動時間が少ないので、写真を撮る時間はたっぷりあります。フィルムは多めに、そしてお酒も多めに。

 

帰りはカトマンズでのんびり過ごしてください。バンバンレストラン(中華)の高久幸雄さんは山学同志会のメンバーで小西政継さんたちとグランドジョラス北壁の冬季登攀を成し遂げました。奥さんの多美子さんがニワニバロッジの女将です。お二人とは1972年にカトマンズでお会いして以来の朋友です。おいしいネパール料理を作ってもらったらいかがでしょうか。トランスヒマラヤンツアーの宮原社長にはネパールのことなら何でも相談してください。5年前、還暦エベレスト登山に挑戦して南峰まで到達したスーパーマンです。ポカラを基地としてアンナプルナを周回するエコツアー開発を計画しています。串藤レストラン(和食)の女将君代さんは9年前に亡くなった無二の親友ランジャン・バッタチャリアの未亡人です。昔々、テレビ放送初期の頃オリエンタルカレーのCMに出ていた人を覚えていませんか。“インド人もびっくり”といっていたのがランジャンです。“ミトチャ(おいしい)、“ミトボヨ(ごちそうさま)”。

 

書いているうちに話が冗長になりました。集約すると、①ネパール人のひとのよさ、素朴さ(もちろんビジネスでこれを期待してはいけません)、②自然の壮大さ、美しさ、神々しさ、③ヒマラヤ王国の独自の文化、現代社会から少し遅れた文明ギャップの中で精神的な〈癒し〉効果、ではなかろうかと独断的な分析をしています。皆さんもどうかご自身の肌で触れて120%ネパールを味わってください。では、“ラムロ・シタ・ジャノス(お気を付けて行ってらっしゃい)”。 (2000331日)

 

202326日)