2019年9月11日水曜日

逍遥 湯河原・カトマンズ #125


みんなで渡れば怖くない

先日、日本の運転免許証の更新をした。警察署で申請、視力検査、写真撮影して30分余りで交付となった。なんとも行政のサービスがよくなったものである。有効期限が3年に短縮されている。

70歳以上は事前に自動車教習所で実技と講習を受けることが義務付けられた。この講習がなんと3か月待ちなのである。行ってみると、私たち講習生のほかの一般講習生の車が一台しか動いていない。この講習をすでに受けた友人から、教官が威張り腐っているから喧嘩っ早いお前は辛抱しろと忠告があった。私は1973年にネパールで免許証を取っているので、教習所の経験がない。覚悟して臨んだが教官は当方をお客さん扱いしてくれる。一時停止で止まり損ねても、縁石に乗り上げても、試験ではないので気楽にとアドバイスする。70歳以上の講習制度が教習所の救済策に思えてくる。

信号機のない横断歩道における歩行者優先についての実態調査の結果が発表になった。2018年の車の一時停止率が全国平均で8.9%である。最優良県が長野で58.6%、ではワーストは?栃木県の0.9%だった。私の住む神奈川は14.4%、体感温度からまあこんなものかという感じ。タクシーは多くが止まるが、一般車はほとんど通過する。

この停止義務は道路交通法で定められている。違反すると「横断歩行者等妨害等違反」で青切符が切られる。普通自動車で反則金が9,000円である。横断歩道のないところの横断者も同様に保護されている。知らなかった。

さて、カトマンズはどうだろうか。このような法令があるかどうか知らないが、まず車は止まらない。主要な交差点には横断歩道があり、交通警察が整理してくれる。一時横断歩道を渡らないと罰金を取られたが、数週間でやめてしまった。歩行者から苦情がでたためという。横断歩道が少なすぎるのである。以前あったと思うところに今日はなくなっている。

勢い歩行者は車の合間を縫って横断せざるを得ないことになる。車は決して止まらない。車優先の習慣はどこから来るのであろうか。多分車を持っているほうが社会経済的に「えらい」のであろう。圧倒的な格差社会なのである。

そういえば運転手は昔「ドライバーサーブ」と呼ばれていた。サーブとは目うえ、格上の人につける「旦那」という称号である。最近は「グル」あるいはもっと丁寧に「グルジ」と呼んでいる。グルは学校の先生や宗教の尊師に使う。機械装置が少ない時代、古くて故障しやすい車を路上で直してしまう技術を評価していた名残であろう。

これからの自動車は燃料としての電気や水素、安全運転としての自動化が主流であるが、このところ日本では高齢者の痛ましい事故が続発している。昨日トヨタが発表したのは、高齢者にありがちなアクセルとブレーキの踏み間違えから守る装置である。小さな地方企業が開発したという。前後の距離を感知して自動的にブレーキがかかる装置も普及しつつある。

ネパールでもバス等大型車の事故が毎日のように報じられている。バスの事故は、屋根にまで乗せる重量超過によるものや夜行バスの居眠り運転が多い。故障車の事故も減らない。安全装置付きの自動車を持ち込むといいようなものだが、故障したときにブラックボックスがあると手におえない。いずれにせよ運転は人間がすることなので、運転者が技術を向上させて、注意して運転するほかないのであろう。

2019811日)