2020年1月17日金曜日

逍遥 湯河原・カトマンズ #133



1128日 ムグリンで「〈おなご先生〉さくら寮」マネジャーのマンジュと落ち合い、カピルバストゥ郡でスジャータの学校に立ち寄ってコハルプールへ。
1129日 バルディア郡の〈おなご先生〉ジャヤンティの学校で教職員にプロジェクト説明。48人の生徒の視力検査と面接。カトマンズ検診組、隣接郡のネパールガンジ検診組に分ける。テライの農村部だが、家のつくりもしっかりしていて豊かな感じがする。スルケット郡ビレンドラナガールに移動し〈おなご先生〉アンビカと合流。
1130日 ダイレク郡ラカムでアンビカの実家に立ち寄り昼食をごちそうになる。〈おなご先生〉チャヤと帰途の検診の打ち合わせ。カリコット郡マンマ泊。カリコット郡も西の山地特有の急斜面に耕地がへばりついている生産力が低い土地柄である。
121日  ジュムラ方面へ40分車で行き、対岸のシェラ村を徒歩で目指す。標高差400m下って登り返す。〈おなご先生〉アムリタの学校はさらに30分上方だが下の学校ジャナジャグリ校で14人の子どもの視力検査と面接。出身の村を聞くと2人はなんと9時間かけて昨日の晩に着いたとのこと。携帯電話が普及したおかげで情報の伝達が早くなった。アムリタの家で昼ご飯をごちそうになる。西の山地でみられる赤米である。ダヒ(ヨーグルト)がおいしい。マンジュは村人同士のネパール語が理解できないという。帰りは村人が1時間であることころを4時間かかる。
122日  ダイレク郡ラカムで〈おなご先生〉チャヤとアニタが患者を集めて待っている。アニタは故郷のカリコット郡で教師だったが、結婚を機にバザールで雑貨店を営んでおり、その店先で面接。視力検査が珍しくて大勢集まる。バザールの人ごみの中での啓もう活動となる。チャヤの家で昼食。目の前を流れるカルナリ川の魚アサラのカレー炒めがおいしい。チャヤもアンビカもジャーティ(カースト)はマジで漁師カーストである。カルナリ地方の民謡に「魚を釣ったよ、ディディ(姉さん)赤い魚籠に何が入っているか見てくれ」という求愛歌がある。
      学校で校長に会うが眼のプロジェクトに関心を示さず。隣接の市役所の前の道端では村の名士たちが日向ぼっこ。女性の副市長が興味を示す。公選制になってから地方の首長は住民目線を持つようになった。以前のように地位に胡坐をかいていられないということだろう。
      スルケット郡ビレンドラナガールに戻る。〈おなご先生〉ミナが患者を連れてくる。同じホテルに某マオ系の大臣が泊まる。100人を超すお付と警備。威厳を示す大名行列なのかそれともこれほどの重警護が必要なほど治安に不安があるのか。行く先々でなんと経費のかかることか。どんな行事でも食事のおもてなしが不可欠なのがこの国の長年の慣習である。レストランは彼らで占領される。シェラ村でマンジュが子供たちに鉛筆を配ったところ、「子どもは鉛筆より食べ物を喜ぶ」との親の弁であった。カトマンズでもいまだに日常のあいさつが「カナカヨ(ご飯食べた)?」、80年代の中国のあいさつが「ツーファンラ(ご飯食べた)?」であった。西の村の男たちは昔からインドへの出稼ぎで家計を支えている。
123日  バンケ郡ネパールガンジに向かい、〈おなご先生〉プージャの教えるラストリヤ校で視力検査と面接。旧いバザールの雑踏の中の隠れた場所にある。校長によるとこの学校の生徒は経済的に底辺層の子女が多いとのこと。国境の町だけあって、初めて聞くジャーティ名が多い。ルパンデヒ郡ブトワルまで走る。
124日  シャンジャ郡に立ち寄りJOCV隊員赴任校プンニャシラ校で11月にカトマンズで診察を受けたディクシャに斜視矯正用の眼鏡を渡す。メガネの使い方を教える。3か月後に再検診することを校長に承知してもらう。JICAネパール事務所長の理解を得てJOCV隊員にも活躍いただいている。ゴルカ郡にも支援者がいて頼もしい。マンジュをポカラで落としてカトマンズに急ぐ。
126日  ルクム郡の患者二人は3回目のカトマンズである。4年前に日本のODAで完成した小水力発電所はカトマンズから車で2日半かかるが、彼らの村はそこからさらに奥へ山を越したところという。二人とも将来はカトマンズで上級学校に行きたい希望がある。カトマンズに出てきて世間が広くなったのはこのプロジェクトの副次効果なのかもしれない。いずれも片目を失明し、義眼を入れる手術である。
      サリヤンの少年も角膜を損傷して回復不能であり、義眼着装を勧めるも手術を回避した。ニム・バハドゥルは眼窩周辺の血腫で4回目の治療にやってきた。だいぶ回復しており、今回は斜視矯正用の眼鏡をつくった。3ヵ月後に再び治療の必要がある。
1210日 ダイレク郡のほとんど視力のないナイナ・カタヤット(12歳)の盲学校への入学につき、キルティプールのラボラトリー校を訪ねる。資金を集めて入学させたい。失明を事前に防ぐ目的のプロジェクトであるが、これからは不幸にして失明してしまった子どもの教育や職業訓練を考えなければいけない。

202014日)