2020年9月4日金曜日

逍遥 湯河原・カトマンズ #148

 

コロナ禍の中で (9)

 

8月に入って3週間以上も雨がなかった。カキの実は小さいまま熟れてしまい、また青いまま落ちる。暑さ寒さに強いツワブキの葉もげんなりしている。一方で6-7月の長雨で野菜が不出来でレタスやキャベツは値段が高騰する。天候はままならないものだ。

 

やっとの雨に一時の朝の涼しい風を感じる。キンカンの花がかんきつ香をとどける。ムラサキシキブの小さな実が色づき始めた。萩の花も咲く。コケも生気を取り戻したようだ。だがこの暑さは9月中旬まで続くという。

 

先日ズームを介して実施された在ネ大使館主催のビジネスセミナーの冒頭西郷大使のご挨拶があった。カトマンズ首都圏で新型コロナウイルス感染が急増している折ご多忙と思われるが、お元気そうで安堵した。首都圏の感染者数はこの一か月で倍増して4万人に迫る勢いである。

 

621日にロックダウンを緩和してから中部、東部テライの都市ビルガンジ、ジャナクプール、ビラトナガール等で感染者がみるみるうちに増えた。工業地帯にインド人労働者数千人が流入したという。インドで感染者が100万人を超えたのが716日であった。それから40日もたたないうちに300万人になった。830日には一日で78,761人を記録している。

 

インドの状況を見れば安易に緩和するべきではなかった。カトマンズへのヒトとモノの流れはインドのビハール州からビルガンジ、ヘタウダ、バラトプール経由の大動脈である。これらの町で時を経ずして増加してきた。手をこまねいているうちに手が付けられなくなる。首都圏市長会を代表するカトマンズ市長(本人も感染)は首都圏に5千人収容の隔離施設を建設するという。ネパールの政治家に往々にして見られるその場限りの軽い発言でなければいいが。

 

規制緩和は経済への影響を忖度したのであろう。38日から72日までにインドへの出稼ぎから帰国した人が50万人に上る。また中東産油国から現在も続々帰国しているが、8月中旬までに帰国した人は51,441人である。多くが農村部に帰っているが新たな収入源があろうはずがない。

 

労働省は28日出稼ぎ先国のリエントリービザや就労許可証が有効な人には9月以降の国際線再開後に渡航を認めると発表した。そもそも仕事がないので帰ってきたわけなのに対象国で労働需要が復活したというのだろうか。30日には国内線と長距離バスの運航禁止の916日までの延長を命じた。

 

私たちはこんな政府の定見のなさにイライラするのであるが、ネパールの人たちは「あっそう、いつものこと」とあまり気にしない。しかしコロナ禍と外出規制で不満が爆発しそうであるに違いない。在留邦人の皆さんもストレスが溜まっていると思われる。無理に自分を抑制せずに過ごしたらいかがだろうか。それには友人との情報交換を密にすることが有効であろう。カトマンズは口コミ社会で多種雑多な情報が飛び交うのが常である。貪欲に情報収集に努め、かつ情報に翻弄されないようにすることが肝要と思われる。家時間が長くなるので普段手にしなかった本を読むのもいいと思う。そして何より「こうすべき」というような硬直した考えを捨て、また他人に強要しない柔らか頭を持つことをお勧めしたい。心にゆとりがなくなったときはメンタルヘルスの専門家に相談するのもいいのではないだろうか。

 

ロルパ郡のバム・クマリから村のティージ祭(女子の祭り)の集まりの写真が送られてきた。マガール族の村である。幸いロルパは感染者数が少ないので皆さん楽しそうに踊っている。一人としてマスクをしていない。新聞で見るカトマンズ市内では多くの人がマスクをしているのだが、村では無頓着のようである。早速FBメッセンジャーで注意喚起したが、村でマスクは手に入るのだろうか。

 

2020830日)