2017年4月21日金曜日

金さん、ごかんべん

414日に日本に一時帰国しました。早朝の成田着便です。空港敷地に沿って満開の桜が続きます。成田空港は羽田に比べて自宅まで遠いのでいつもは羽田を使います。

私といえば成田空港のほうが好きなのです。空港から千葉までの鉄道にしろ高速道路沿線にしろ、日本の原風景ともいえる里山の趣に、ああ帰ってきたのだという癒される気持ちになるのです。

東海道線、子供のころは湘南電車と言っていましたが、大船を過ぎると両側は野菜畑の風景になります。大磯にいたるとますます気持ちが和らぎ、西行の秋をうたった『鴫立つ沢』旧跡のある二宮を過ぎ、小田原の先は相模湾が春の色に光ります。この間、沿線にはいろいろな種の桜木が花を散らせているのです。

我が家の枝垂れ桜はとうに花を終わらせましたが、3月の寒さで開花が遅れたソメイヨシノは満開です。華やかさに心を奪われながら、モミジの若葉のやわらかな あおさに心が向きます。

西行の桜花をうたった「はなのしたにて春死なむ」は有名ですが、白洲正子『西行』(新潮文庫)は、晩年の「地獄の猛火の中で苦しんでいる男女を描いた」歌をあげて、「地獄絵の歌のほうがはるかに真に迫っており、なぜ晩年になってこのように凄惨な情景を詠まねばならなかったのか」と問うています。

桜花に浮かれるとき、西行の懊悩に比べるべきもありませんが、私も若いころの浅はかなできごとが夢に出て脂汗をかくような歳になってしまいました。


(スガジイ)