2017年1月20日金曜日

クマさん大王の物語

ある山奥の小さな森の話です。この森に外の世界から訪れる動物も少なく、森のリーダーであるくまさん大王を中心に、様々な生き物が平和に暮らしていました。決して豊かではありませんが、皆で助け合って、諍いの少ないところでした。
時代がたつと、近くの森の王者が他の森のライオンやトラに襲われて追放されてしまうという出来事が聞こえてきました。それもいくつかの森で立て続けに起こっているようです。この森のくまさん大王は自分の力を絶対的に信じていましたが、よその森の出来事が聞こえてくるたびに不安になりました。自分の前では従っているのに、目の届かないところでは舌を出していやしないかと気にするようになりました。部下のレッサーパンダたちに動物たちの噂話を監視するように命じ、不審な動物を捕まえては檻に入れてしまうようになりました。
やがてくまさん大王は年老いて死に、息子たちの中から新しい大王が選ばれました。新しい大王は兄弟の間でもっとも先祖を敬っていたのです。
よその森との交流の機会も増えて、遠いいくつかの森では大王様の下で自由で、豊かで、幸せに暮らしていることがわかってきました。くまさん大王は、自分の森も何か変わらなければならないのではないかと考えるようになりました。
しかし、そんな知らせを自分の森の将来のこととして受け止めたのは、兄弟や部下の中にもいませんでした。くまさん大王は子供のころに遠い豊かな森を旅したことがあるのです。
(つづく)

(スガジイ)