2017年5月12日金曜日

カトマンズの風物詩

霧の中から天秤棒を担いだ農夫が近づくにつれてだんだんはっきり姿をあらわす、そんな観光プロモーション映像がありました。冬から春になる一歩手前のカトマンズ盆地の風物詩でした。かごの中は新鮮な野菜であったり、素焼きの器に入ったダヒ(ヨーグルト)です。ティミやバドガオン(バクタプール)の人たちです。南の郊外のチャパガオンやルブでも野菜作りは盛んでした。ジャープーと呼ばれるネワール族の農民です。
2000年代初めから首都圏に宅地造成ブームが始まります。都市が外周に広がるにつれて農地が蚕食されます。都市住民の核家族化に伴う住宅の実需と、金余りによる投資の行く先のない金が住宅産業に流れ込むのと、農業を敬遠する農家の若い世代が増える中で農地を手放したいという事情がマッチングしたのでしょう。
首都圏の人口が増加するにつれて野菜の供給地は盆地の外に広がっていきます。20年ほど前からでしょうか、チトワンやテライに野菜生産地が広がり始めます。インドのビハール州で野菜栽培が急速に伸びた時期と軌を一にしています。ビハール州の野菜栽培技術を持った農民がチトワンで請負栽培をしています。野菜の流通が季節を通じてバラエティ豊かになったのは、低地の気候と栽培技術の進歩によるところです。
一方、首都圏ティミの農民も意気軒昂です。一家族で持っている20-50アールという狭い耕地を有効に使って通年栽培しています。労力を惜しまず、緻密な栽培技術で健闘しているジャープーの野菜農業は、都市化に負けずにまだまだカトマンズの食卓を潤すものと思われます。
我が町湯河原のスーパーマーケットで地場産の野菜や果物を見つけました。生産者の名前が付されています。相模湾の新鮮な魚も潤沢です。「地産地消」で地域を豊かにするのが私流の町おこしの原点です。
(スガジイ)